■引渡し猶予(ひきわたしゆうよ)
解説
「引渡し猶予」とは、不動産の売買契約において、買主が代金を支払ったり所有権移転登記を済ませたりした後も、売主が一定期間そのまま物件に居住し続けることを、買主が許可する特約のことです。
普通は「代金支払い+所有権移転登記が終わったら、すぐに物件を引き渡す」ことが原則ですが、事情によっては少し時間が必要な場合があります。その際にこの猶予が使われます。
【引渡し猶予が使われる典型的なケース】
①売主が新居の契約・引越しの準備を行っていて、契約成立後すぐに引越せないとき。
②売却代金を使って新居のローンを組む予定があり、代金受領と引越しの間に時間的なズレがあるとき。
③学校の転校や勤務先の異動、建物の解体・改修が終わっていないなど、引越し時期に調整が必要な事情があるとき。
【 設定する際のポイント/注意点】
①契約書に「引渡し猶予特約」として、具体的な期間や条件を明記すること。
②猶予期間中の物件の管理責任(損壊・滅失など)や、固定資産税などの清算負担の起算日も明文化すること。
③“無償居住”として扱われることが多く、賃貸借契約を結ぶ形にしない方が売主・買主双方でリスクが小さいことがある。
【まとめ】
引渡し猶予は、売主の都合で「引渡しを少し延ばしてもらう」ための特約で、買主側では注意して契約内容を確認することが大事です。
スムーズな住み替えや引越し準備のためには便利な制度ですが、「いつまでに明け渡すか」「その間の責任はどうするか」が曖昧だと後で困るので、契約時にしっかり取り決めましょう。