2025.11.13
親の実家や土地を所有/相続予定で、「地方・郊外」の不動産をどう扱うか悩んでいる方も多いかと思います。
こちらの記事では、所有・相続・管理の「先」を見据えて動きたい方に、2025年現在においての社会的な背景による不動産分野への影響等について記事に致しました。
【本記事を読めば、以下のことがわかります】
✅ 親の実家・土地を「地方・郊外」で所有・相続する際に直面しうる主要なリスク(高齢化・人口減少・空き家化)
✅ 「相続不動産」が資産ではなく、管理・維持・処分の難しさを伴う“負動産”になり得る構図
✅ 地方・郊外物件の市場環境について(買手・借手の減少、流動性低下、維持コストの増大)
✅ 所有・相続・売却・活用という不動産ライフサイクルにおいて、押さえておきたい3つの視点(登記・手続き/税・維持費用/地域・将来性)
✅ 実例を通じて「使えない・売れない・残るだけの実家・土地」が抱える実態を理解し、自分の物件で早めにチェックすべきポイントが明確に
✅ 所有・相続物件を「どう備えるか」について、具体的なチェックリストを用いて自分に合った対応を検討できる
目次
高齢化と“相続不動産”の増加が招く影響
①「2025年問題」と相続増加の波
日本では、団塊世代が75歳以上の高齢者となる2025年以降を「大相続時代」と呼び、相続の件数が急増することが予想されています。
特に地方・郊外にある実家や土地が相続の対象となるケースが多く、被相続人の高齢化に伴い「所有者が亡くなってから活用できない」「誰も住まないまま放置される」という流れが生じています。
② 相続後の“流動性低下”と管理問題
地方、郊外の不動産では、買手や借手が見つからず、売却どころか貸すこともできないケースが多く存在します。
例えば、「使わない土地を相続して管理の手間だけが残る」という指摘もあります。
また、登記をしないまま放置されている「所有者不明土地」が増えており、2024年4月からは相続登記が義務化されています。
③高齢所有者が抱える「管理・税負担」の壁
高齢の所有者が地方・郊外の土地や建物を持つケースでは、以下のような負担が顕在化しています。
・固定資産税・都市計画税・維持管理費用の発生
・管理が行き届かず、倒壊・損害賠償リスクが発生する可能性
・遠方に住む相続人が管理・処分を担うことになり、実務負担が大きくなる
地方・郊外不動産に潜む“負動産化”のリスク
①地方・郊外が直面する市場環境の変化
地方では若年層の都市部流出・出生数減少が進んでおり、住宅需要が年々下がっています。
空き家割合は全国平均でも約5.6%(2018年度※国土交通省)で、地方の県では10%を超える地域もあるようです。
こうした背景があるため、地方・郊外の不動産は「売れない・貸せない・維持が困難」というリスクを帯びています。
②なぜ「負動産」になりやすいのか?
以下の条件が揃うと、売れにくく、貸しにくく、管理が困難な不動産になりがちです。
・駅から遠い(交通アクセスが悪い。)
・建物、インフラが老朽化しており、リフォームコストが高い。
・周辺で空き家が増え、地域の魅力、住環境が悪化。
こういった条件の不動産は買手・借手が付きにくく、管理・処分コストだけが残る“負動産”になる可能性が高まります。
③資産価値の低下・負担増の構図
・所有しているだけで固定資産税、都市計画税、維持管理費が発生。空き家化するとこれらだけでも大きな負担。
・売却したくても買い手がいないケース。賃貸に出しても収益が出ない/管理動物・害虫・放火リスクなどの環境リスク。
所有し続けるだけで増えるコストと価値低下が結果として「資産」ではなく「負債」に変わる所有物件が増加していきます。
④地方・郊外で注意すべき具体的条件
・住居供給過多で競合が激しい地区。
・道路付け、インフラ整備が遅れている。
・地域で人口が減少傾向、若年層が流出している。
・周辺施設(病院・スーパー・交通)が撤退・縮小している。
これらが揃うと、不動産の流動性と将来価値が大幅に下がる可能性があります。
相続・管理時に押さえておきたい3つの視点
①登記・名義・手続きを先送りしない
長期間登記変更がされていなかったり、相続人多数で連絡が取れない状態だと、売却・譲渡が極めて難しくなりますので注意しましょう。
所有者不明の土地の発生を防ぐため、2024年4月から相続登記が義務化し、相続した不要な土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」も始まりました。
相続したくないのであれば、相続放棄が選択肢の一つとなりますが、預貯金などプラスの財産もすべて相続できなくなりますので、プラスの遺産があまりない場合が多いです。
②相続税・固定資産税・管理費用を“線”で考える
「節税になるから不動産を相続」という考えだけでは済まされません。不動産維持・処分のコストを含めた“線としての資産活用”が重要です。
不動産を承継する際は、以下のコストも含めて検討しましょう。
・固定資産税・都市計画税・管理費用・解体費用
・売却・賃貸・活用が可能かという流動性
・今後の地域の人口・交通・住環境の見通し
これらをまとめて考えることで、「残すべきか・手放すべきか」が見えてきます。
③将来の需要・市場性を意識する
地方・郊外では、人口流出・少子化・高齢化により、住み手・買い手が減少するリスクがあります。
相続後に“使えない、売れない”という事態を避けるため、地域、物件特性を慎重に見極めましょう。
所有・相続不動産の将来を考える上で以下を確認しましょう。
・地域の人口が減少傾向かどうか
・交通・医療・商業インフラが維持されているか
・建物・土地にリフォーム・建替え可能性があるか
※地方・郊外の物件では、これらが備わっていないと価値が著しく下がるリスクがあります。
実例に学ぶ:地方相続物件の典型ケース
【実例①:アクセス悪・築年数古の戸建を相続】
・駅から遠く交通不便な戸建を相続。
・リフォーム費用が高く、貸すにも売るにも決め手がない。
・結局固定資産税と管理費だけが増え、「処分できない実家」が負担に。
日本全国で、住まなくなった・借り手が付かない・売れない住宅(いわゆる “空き家”)が年々増加しています。
その背景には、少子高齢化・人口減少・若年層の都市部集中・地方・郊外住宅エリアの需要減少という構造変化があります。
築年数が古く、交通アクセスが悪い、リフォーム費用がかかるといった “市場でのハンディ” がある物件は、売却・賃貸どちらも難しくなり、「持っているだけでコスト(固定資産税・管理費・修繕費)だけがかかる負担物件化」しやすいです。
地域の景観悪化・防災・倒壊リスク・近隣地価下落といった近隣・地域への波及も指摘されています。
「実例①」は、典型的な「空き家・遊休住宅問題」の一例と言えます。
【実例②:所有者不明・土地放置ケース】
・遠方に住む所有者/相続人不在という土地。
・空き地・空き家化し、自治体から管理指導が入る。
・買手がつかないまま維持コストだけが膨らみ、資産価値が低下。
「所有者不明土地」と呼ばれる、登記上所有者はいるものの所在不明、連絡先不明、あるいは相続登記がなされず誰が管理すべきか曖昧になっている土地が、かなりの規模で存在しています。
こうした土地・建物が放置されると、雑草・害虫・ゴミの不法投棄・倒壊・治安リスク・近隣地価の下落など「地域社会にとっての負担」となります。
特に公共事業・災害復旧・災害対策の用地取得・地域まちづくりにおいて、「所有者が分からない」「相続人が多数・所在不明」といった事案が障害になっているという報告もあります。
このため、制度的にも「相続登記義務化(2024年4月から)」「所有者不明土地管理制度」などが進んでいます。
「実例②」は、典型的な「所有者不明土地/遊休地問題」の構図です。
所有・相続・処分のためのチェックリスト
所有、相続、処分を検討する場合、以下のチェックリストをひとつずつ確認して、どうすることが一番「得」なのか考えてみましょう。
✅ 所有前・相続前のチェック
・物件所在地の人口動態、将来性
・交通、医療、生活利便施設の維持状況
・建物、土地の法的状態(道路付け、法令適合)
・固定資産税、維持管理費の見込み
・相続人、承継者の有無、居住地、対応力
✅ 相続発生後の初動対応
・名義変更、登記手続きの迅速な実施
・管理、メンテナンス計画の立案
・売却、賃貸、寄付、解体など、複数の選択肢の検討
✅ 将来備えるための対応策
・空き家バンク、自治体補助金の活用検討
・リフォーム、リノベーションによる用途転換
・不動産、税務、建築の専門家相談を早めに実施
・処分、解体コストも含めたシナリオ作成
まとめ
不動産を所有している=資産、とは限りません。
特に「高齢化」「相続」「地方・郊外」といったキーワードが重なる物件では、不動産が資産ではなくリスクになる可能性が高まります。
「所有したら終わり」ではなく、
「維持・活用・将来を見据えて考える」ことが大切です。
自分や家族が将来にわたって無理なく管理・活用できるかを今一度チェックし、早めにアクションを起こすことで、トラブル回避・安心の資産継承につながります。